仕事・副業

個人事業主の老後の味方、「小規模企業共済」について解説します!

個人事業主・フリーランスにとって何かと不安なのが将来・・・

会社員のように毎月決まった額の収入を得られる保証はどこにもありませんし、老後となったらもっと不安に感じられる方も多いはず。

そんな将来の不安を少しでも和らげるために、個人事業主や小規模企業経営者(共同経営者も可)のみが加入できる「小規模企業共済」というものがあります。

ここでは「小規模企業共済とは何なのか?」「どうやって申し込むのか?」など、小規模企業共済の概要について見ていきます。

「小規模企業共済」について

ここでは「小規模企業共済」についての概要を見ていきます。

小規模企業共済とは?

小規模企業共済は簡単に言うと、「小規模事業者向けの退職金制度」です。

サラリーマンには「退職金」というものがありますが、自営業者には当然そういったものはありません。

小規模企業共済では、現役時代に「掛金」として納めたお金を積み立てておき、廃業時に退職金として受け取れます。
※老齢を理由に受け取ることも可能です

廃業でなくても、事業主の死亡時にも受け取ることができますので、遺族の方へお渡しすることも可能です。

小規模企業共済への加入資格

残念ながら小規模企業共済は誰でも加入できるわけではありません。

加入資格を有する対象者は、主に個人事業主と小規模企業の経営者です。
※共同経営者も加入可能です

ただし、業種によって従業員数に制限が異なります。詳しくは下記を参考にしてください。

1:建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員

2:商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員

3:事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員

4:常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員

5:常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員

6:上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

中小機構「小規模企業共済ー加入資格」より

自営業者であっても、専従者(家族従業員)は加入資格はありません。あくまで経営者のみです。

また、サラリーマンの傍ら副業として個人事業を行っている場合も加入資格はありません。

小規模企業共済の掛金と納付方法

小規模企業共済の掛金は月額「1000円~70000円」の範囲(500円単位)で自分で決められます。

納付は口座振替で、払込方法は「毎月払い」「半年払い」「年払い」で選択できます。

掛金額や払込方法を変更する場合はあらかじめ手続きが必要になります。

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「小規模企業共済」のメリット

ここでは「小規模企業共済」のメリットについて見ていきます。

1:掛金の負担が柔軟

掛金は月額「1000円~70000円」の範囲であれば自由に増額と減額が可能になっています。

また、払込方法 (毎月払い / 半年払い / 年払い)の変更も可能です。

その他、掛止め(一時休止:6か月あるいは12か月)も可能になっていますし、途中解約も可能なので、その時々の経営状況で柔軟に負担を調整できます。

ただし、掛金を12か月以上滞納してしまうと契約解除になってしまい、場合によってはこれまでの掛金が無駄になるので注意しましょう。

2:掛金は全額所得控除の対象

小規模企業共済の掛金は全額、所得税や住民税の税額を計算する場合に考慮される「所得控除」の対象になります。

ですので、掛金が多ければ多いほど節税効果が高くなり、老後だけでなく現役時代でも有効と言えます。

3:満期や満額がない

小規模企業共済には満期や満額というものはありませんので、一般世間での定年を過ぎてもなお働いているならずっと契約し続けられます。

ですので、長く働けばより老後の受給額も多くなっていきます。

また、掛金は契約者が変わってもそのまま次の契約者(配偶者か子で1回限り)に引き継ぐことができますので、事業承継時も安心です。

4:共済の受給権は差し押さえの対象外

小規模企業共済の共済金や解約時の手当金は差し押さえの対象外となりますので、将来の見通しが立ちやすくなります。

ただし、国税の滞納があった場合は差し押さえられることがあります。

5:貸付制度が利用できる

小規模企業共済では、緊急時や災害時、新規事業創業等で事業資金の貸し付けを受けることができます。

貸付上限額はこれまで納付した掛金によります(納付掛金の7割~9割程度)。

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共済金の受取り

ここでは実際に共済金を受け取る場合について見ていきます。

共済金の受取事由

共済金はどのような場合に受け取れるのか見ていきましょう。

次の4つの事由に分けられます。

  • 「A共済事由 (共済金A)」:事業の廃業や契約者が死亡した場合
  • 「B共済事由 (共済金B)」:老齢給付 (契約者が65歳以上で180か月以上納付の場合に選択可能)
  • 「準共済事由 (準共済金)」:法人成りにより加入条件を満たさなくなった場合
  • 「解約事由 (解約手当金)」:解約した場合(12か月以上の掛金滞納による契約解除も含む)

ただし、「A共済事由」と「B共済事由」は最低でも6か月以上掛金を納付していないと条件に満たしません。

また、「準共済事由」と「解約事由」は12か月以上掛金を納付していないと条件に満たしません。

つまりこれらの場合は「掛け捨て」になってしまいますので注意が必要です。

共済金の受取額一例

共済金は、掛金額と納付月数に応じた「基本共済金」と、毎年度の運用収入に応じて付加される「付加共済金」で構成されています。

この合計額を受取事由発生時に受け取れるのですが、受取額は受取事由によって多少変化があります。

例えば掛金額が毎月1万円(年間12万円)の場合の「5年」「10年」「15年」「20年」「30年」納付した場合を見てみましょう。

【5年納付した場合 (掛金合計額:600,000円)】

共済事由受取共済金額
共済金A621,400円
共済金B614,600円
準共済金600,000円
解約手当金掛金の納付月数による(掛金合計額より下回る)

【10年納付した場合 (掛金合計額:1,200,000円)】

共済事由受取共済金額
共済金A1,290,600円
共済金B1,260,800円
準共済金1,200,000円
解約手当金掛金の納付月数による(掛金合計額より下回る)

【15年納付した場合 (掛金合計額:1,800,000円)】

共済事由受取共済金額
共済金A2,011,000円
共済金B1,940,400円
準共済金1,800,000円
解約手当金掛金の納付月数による(掛金合計額より下回る)

【20年納付した場合 (掛金合計額:2,400,000円)】

共済事由受取共済金額
共済金A2,786,400円
共済金B2,658,800円
準共済金2,419,500円
解約手当金掛金の納付月数による

【30年納付した場合 (掛金合計額:3,600,000円)】

共済事由受取共済金額
共済金A4,348,000円
共済金B4,211,800円
準共済金3,832,740円
解約手当金掛金の納付月数による

いずれの場合でも廃業や死亡時に受け取れる「共済金A」が一番高額になっています。

解約手当金は240か月未満だと掛金合計額を下回りますので注意が必要です。解約手当金の具体的な支給率は次のようになります。

掛金納付月数支給率
12か月未満0%(掛け捨て)
12~84か月未満80%
84~240か月未満6か月単位で段階的に増加
240~246か月未満100%
246か月以上100%から段階的に増加(120%が最高)

共済金の受取方法

廃業・死亡等で受け取る共済金は、退職金のように一括で受け取る「一括受取り」、年金のように定期的に受け取れる「分割受取り」、最初は分割で残りは一括で受け取る「併用型」の3パターンがあります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

一括受取り

一括受取りは、通常の退職金のように一括で受け取れるものです。

「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」すべての場合で選択できる受取方法です。

分割受取り

分割受取りは、年金のように共済金のうち一定額を分割して受け取れるものです。

分割受取りのための要件

分割受取りを選択するには下記の要件をいずれも満たす必要があります。

  • 「共済金A」「共済金B」であること
  • 共済金の金額が300万円以上であること
  • 共済を受け取る事由が生じた時点で60歳以上であること

ただし、契約者の死亡によって受け取ることになった場合は分割受取りは選択できません。

分割共済金の受取内容

共済金を分割して受け取る時期や期間はあらかじめ決まっています。

  • 受取時期:年6回奇数月 (毎年1月、3月、5月、7月、9月、11月)
  • 受取期間:10年または15年(どちらか選択する)

ただし、共済金を分割で受給している方が死亡した場合や、重度障害等の特別の事業があった場合は残りを一括で受け取ることも可能になります。

一括受取りと分割受取りの併用

共済金は一括受取りと分割受取りを併用することができます。ただし、次の要件すべてを満たす必要になります。

  • 「共済金A」「共済金B」であること
  • 共済金の金額が330万円以上であること
  • そのうち、分割で受け取る共済金が300万円以上、一括で受け取る共済金が30万円以上であること
  • 共済を受け取る事由が生じた時点で60歳以上であること

分割受取りと同様、契約者の死亡によって受け取ることになった場合はこの要件を満たしていても不可です。

共済金受給時の税法上の取り扱い

共済金は受取方法や年齢によって税法上の取り扱いが異なります。具体的には次のようになります。

共済金 / 解約金 税法上の取扱い
一括受取り(死亡以外) / 準共済金 退職所得扱い
一括受取り(死亡によるもの) 死亡退職金扱い(相続税)
分割受取り 公的年金等の雑所得
任意解約 / 共同経営者の退任による解約  一時所得扱い
(65歳以上の場合は退職所得扱い)
掛金滞納による契約解除 一時所得扱い

小規模企業共済は、小規模事業者向けの「退職金」という性質から、基本的には「退職所得」扱いになります。

ただ、分割で受け取ると年金と同じ扱いになります。

その他、解約による受給は「一時所得」扱いになります。

以上小規模企業共済について見てきました。

小規模企業共済は一定期間を超えて納付するとプラスになって戻ってくるものなので、もし現役時代に余裕があるならぜひ加入すべきものと言えます。

参考になりましたら幸いです。

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