今回はちょっと応用的な取引として、売り上げたものを返品や値引きしなければならない場合や、また仕入れたものを返品や値引きしてもらう場合の仕訳について見ていきます。
また、すでに記帳されているものを訂正したい時の仕訳について見ていきます。
ここで見る仕訳方法は今後の仕訳にも役立つ部分なので、ぜひ身に付けてください!
新たに学ぶ勘定科目
特になし
返品・値引きの仕訳(売り上げ時)
こちらが納品した商品が間違っていたり、販売した商品に不都合(キズなど)があった場合に、返品を求められたり値引きをしてあげるということが起こりえます。
まずは返品(全額返金)を求められた場合の仕訳について見ていきましょう。
返品(全額返金)を求められた場合の仕訳
では下記のような例を考えてみます。
取引例
取引1:【1/17に商品Aを2500円で販売し、その代金を現金で受け取った】
取引2:【1/18に商品間違いのため返品され、現金で全額返金した】
まずは取引1の仕訳をしてみましょう。
こちらは通常通り、「売上」と「現金」の勘定科目を使って仕訳します。
「売上」は貸方(右側)で、代金の受け取り手段(ここでは「現金」)が借方(左側)です。ということでまずは次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 17 | 現 金 2500円 | 売 上 2500円 |
摘要:商品Aの販売 |
続いて取引2を見ていきます。
ここでは商品間違いにより返品されました。つまり先ほどの取引Aの仕訳を取り消さないといけません。
過去に行った仕訳の取り消し方法は、元の仕訳の借方と貸方をそのまま入れ替えばOKです。ということで次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 18 | 売 上 2500円 ( 元々「貸方」にあった勘定科目 ) |
現 金 2500円 ( 元々「借方」にあった勘定科目 ) |
摘要:商品Aの返品 |
こういう借方と貸方を入れ替えることを「逆仕訳(ぎゃくしわけ)」や「反対仕訳(はんたいしわけ)」と言います。
逆仕訳(反対仕訳)をすることですでに行っている仕訳をなくすことができます。
「元の仕訳」と「逆仕訳」をまとめて見た場合、借方も貸方も結局は同じ勘定科目になり、ともに相殺されて最初からなかったものと同じになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
現 金 2500円 ( 元の仕訳の位置 ) |
現 金 2500円 ( 逆仕訳の位置 ) |
|
売 上 2500円 ( 逆仕訳の位置 ) |
売 上 2500円 ( 元の仕訳の位置 ) |
わざわざ逆仕訳をしなくても、「元の仕訳」自体を削除すれば良いのでは?と思われると思いますが、何かしらの取引が発生した段階で仕訳はしておかなければならないので、面倒でも「元の仕訳」と「逆仕訳」の両方を書いておく必要があります。
値引きをした場合の仕訳
商品にキズがあったなどで、全額でないにしても一部返金するということもあり得ます。ここではその場合を見ていきます。
まずは次のような取引を考えましょう。
取引例
取引1:【1/17に商品Aを2500円で販売し、その代金を現金で受け取った】
取引2:【1/18に商品にキズがあり、500円値引きした】
まずは取引1の仕訳をしてみましょう。こちらは先ほどと同じなので、次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 17 | 現 金 2500円 | 売 上 2500円 |
摘要:商品Aの販売 |
では取引2を見ていきます。
今度は全額返金ではなく、500円だけ返金です。この場合でも先ほどと同様に逆仕訳をします。
ただし、返金額は500円なので、金額は500円にしておきます。ということで次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 18 | 売 上 500円 ( 元々「貸方」にあった勘定科目 ) |
現 金 500円 ( 元々「借方」にあった勘定科目 ) |
摘要:商品Aの返品 |
こちらも「元の仕訳」と「逆仕訳」をまとめて見ると次のようになり、借方と貸方を差し引きすると最終的な残高としてはともに2000円ということになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
現 金 2500円 ( 元の仕訳の位置 ) |
現 金 500円 ( 逆仕訳の位置 ) |
|
売 上 500円 ( 逆仕訳の位置 ) |
売 上 2500円 ( 元の仕訳の位置 ) |
|
最終的な残高 | 現 金 2000円 | 売 上 2000円 |
つまり、売り上げ額も受け取った金額も最終的には「2000円」です。
勘定科目を元々入っていた位置の逆側に持っていくことで、いわば「マイナスの取引(相殺)」になります。
こういったマイナスにさせる仕訳は簿記では結構出てきますので、必ず覚えておいてください。
返品・値引きの仕訳(仕入れ時)
今度は自分が仕入れた商品に間違いや不都合があって、返品を求めたり、値引きしてもらった場合を見ていきましょう。
返品を求めた場合の仕訳
では次のような取引を想定してみます。
取引例
取引1:【1/17に原料Aを4000円で仕入れ、代金は現金で支払った】
取引2:【1/18に仕入れた原料を検品してみると違うものだったので返品し、現金で全額返金してもらった】
まず取引1の仕訳をしてみましょう。
こちらも通常通り「仕入」と「現金」を使って仕訳します。「仕入」は借方(左側)、残りの支払い手段が貸方(右側)になります。
ということでまずは次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 17 | 仕 入 4000円 | 現 金 4000円 |
摘要:原料Aの仕入れ |
取引2では商品間違いに気づいたためすべて返品となります。
この場合でも売り上げ時と同様「逆仕訳」をして、取引1の仕訳をなかったことにします。ということで次のようになり
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 18 | 現 金 4000円 ( 元々「貸方」にあった勘定科目 ) |
仕 入 4000円 ( 元々「借方」にあった勘定科目 ) |
摘要:原料Aの返品 |
売り上げ/仕入れ関わらず、すでに行った取引をなしにするには「逆仕訳」ということを覚えておいてください。
値引きをしてもらった場合の仕訳
今度は全額返金ではなく、一部のみ返金してもらう値引きの場合を見てみましょう。
取引例
取引1:【1/17に原料Aを4000円で仕入れ、代金は現金で支払った】
取引2:【1/18に仕入れた原料を検品してみるとキズがあったので400円値引きしてもらい、返金は銀行振込だった】
取引1は先ほどと同様なので、そのまま仕訳します。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 17 | 仕 入 4000円 | 現 金 4000円 |
摘要:原料Aの仕入れ |
続いて取引2で一部(400円)値引きになります。ただし今回は、支払いは現金でしたが、返金は銀行振込というイレギュラーなものになっています。
まずは仕入れ部分のみ仕訳してみましょう。元の仕訳の反対側にまずは「仕入」を入れます。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 18 | 仕 入 400円 | |
摘要:原料Aの返品 |
そして残りの借方(左側)は現金で返金されたのならそのまま「現金」で構いませんが、今回は銀行振込なのでそれを借方(左側)に書きます。
ということで次のようになります。
付 | 借 方 | 貸 方 |
1 / 18 | 普通預金 400円 (当座預金) |
仕 入 400円 |
摘要:原料Aの返品 |
逆仕訳のように借方・貸方両方をひっくり返して取り消し処理をする場合もあれば、こちらの仕訳のように片側の勘定科目だけを反対側に書いてマイナスにするということも簿記ではよく行われます。
似たような仕訳は今後も出てきますのでぜひ身に付けておいてください。
まとめ
ではまとめです。
- 返金や返品の仕訳をする場合は、それぞれの勘定科目を反対側に持って行く
- こういった仕訳を「反対仕訳」や「逆仕訳」という
では次回は代金後払い時の仕訳について見ていきましょう。