簿記

【第8回目】個人事業主ならこれだけは知っておくべき簿記講座 - 小切手・手形を使った時の仕訳を解説!

売り上げ時・仕入れ時の決済方法としては現金や銀行振込が多いですが、小切手や手形を使った取引もあります。

今回はこういった取引に焦点を当てて見ていきます。

新たに学ぶ勘定科目

  1. 「受取手形」
  2. 「支払手形」

「小切手」「手形」とは?

「小切手」や「手形」という言葉についてはよく耳にするかと思います。

「小切手」は、銀行に持っていくとすぐに現金化できる証券です。小切手に支払額を記載しておくだけで、あとは相手がそれを銀行に持っていくと口座から引き落とされる仕組みです。

支払いのためにいちいち細かくお金を用意しておく必要もありませんし、高額な現金を持ち運ぶこともないので便利です。

一方、手形は「期日になったら支払う」ことを約束した証券で、すぐには現金化できません(手形に記載されている日付まで待たないといけない)。

手形の支払期日はだいたい30日、60日、90日、120日で設定されていることが多いです。

ちなみに、小切手や手形を発行することを「振り出す(ふりだす)」と言います。

小切手や手形を発行した人を「振出人(ふりだしにん)」、小切手や手形を受け取った人はそのまま「受取人」です。

ではこういった小切手や手形を使った取引を見ていきましょう。

↑ 目次へ戻る

小切手を使った取引

まず最初は小切手を使った取引について見ていきます。

小切手を受け取った場合(自分が受取人)

商品を売って、その代金として小切手を受け取った場合を見てみましょう。

取引例

8/4に商品Aを75000円で販売し、その代金として小切手を受け取った

こちらは通常の売り上げの仕訳になりますが、小切手の勘定科目は何か?ということになります。

先ほども言いましたように、小切手は銀行に持っていけばすぐに現金化できることから、「現金」で処理します。

ということで次のようになります。

日付 借  方 貸  方
8 / 4 現 金 75000円 売 上 75000円
摘要:商品Aの販売

小切手で支払った場合(自分が振出人の場合)

今度は仕入れ等の支払いで、自分が小切手で支払う(振り出す)場合を見てみます。

取引例

8/4に原料Aを60000円で仕入れ、その代金として小切手で渡した

こちらも通常通り、仕入れの仕訳をすれば良いだけです。

ただ、受け取り時の小切手の勘定科目は「現金」でしたが、支払い時の小切手の勘定科目は「当座預金」になります

ということで次のようになります。

日付 借  方 貸  方
8 / 4 仕 入 60000円 当座預金 60000円
摘要:原料Aの仕入れ

受け取り時は、銀行に持っていけばすぐに現金化できるので実質現金を持っているのと同じです。

しかし支払い時となると、自分の当座預金からお金が引き出されるため「当座預金」としておかないといけません。

このように、小切手は受け取り時と支払い時では勘定科目が異なるということを覚えておいてください。

↑ 目次へ戻る

約束手形を使った取引

今度は手形を使った取引を見ていきましょう。

約束手形を受け取った場合(自分が受取人)

売り上げの代金を約束手形で受け取った場合を見てみましょう。

取引例

取引1:【8/5に商品Aを75000円で販売し、その代金として約束手形(振出日:10/5)を受け取った】

取引2:【振出日(10/5)になったので、代金が預金口座(普通口座)に振り込まれた】

約束手形を受け取った場合は、手形を受け取った日と、入金された日でタイムラグが生じます。そのため、仕訳も2つに分けてしないといけません。

まずは取引1の部分を仕訳しましょう。

ここでは通常通りの売り上げの仕訳をすれば良いのですが、手形を受け取っただけで代金はもらっていません。

ただ、売掛金の場合と同じで、代金を実際に受け取ったかどうかは関係なく、とりあえず手形は受け取りましたよということを記しておく必要があります。

手形を受け取った場合の勘定科目は「受取手形(うけとりてがた)」を使います。

ということで取引1は次のようになります。

日付 借  方 貸  方
8 / 5 受取手形 75000円 売 上 75000円
摘要:商品Aの手形売り上げ

「売掛金」と同じで代金はまだこの時には受け取っていませんが、とりあえず手形は受け取りましたよということを記録しておくために、「受取手形」で仕訳をしておきます。

では今度は取引2の、振出日になって代金が振り込まれた場合を見ていきましょう。

お金はもう振り込まれましたので、「受取手形」の勘定科目は必要なくなりました。ですので、この「受取手形」の勘定科目をなくさないといけません。

こちらも「売掛金」と同じように、反対側に持っていって「受取手形」を消します。

日付 借  方 貸  方
10 / 5   受取手形 75000円
( 元々「借方」に入っていたもの )
摘要:

そして残りの借方には銀行振込がされたことを書けばよいので、最終的に次のようになります。

日付 借  方 貸  方
10 / 5 普通預金 75000円 受取手形 75000円
( 元々「借方」に入っていたもの )
摘要:手形入金

約束手形で支払った場合(自分が振出人)

今度は自分が約束手形を振り出す場合を見ていきます。次のような取引を考えてみます。

取引例

取引1:【3/20に原料Aを60000円で仕入れ、その代金として約束手形(振出日:6/20)を振り出した】

取引2:【振出日(6/20)になったので、代金が預金口座(当座口座)から引き落とされた】

では取引1から見ていきましょう。こちらは仕入れになるので、まずは通常通り借方に「仕入」が入ります。

日付 借  方 貸  方
3 / 20 仕 入 60000円  
摘要:

残りの貸方ですが、ここでは約束手形を振り出したことを記入します。約束手形を振り出した場合は「支払手形」の勘定科目を使います

ということで取引1は最終的には次のようになります。

日付 借  方 貸  方
3 / 20 仕 入 60000円 支払手形 60000円
摘要:原料A手形仕入れ

約束手形は受け取った時は「受取手形」、振り出したときは「支払手形」に変わりますので注意してください。

では取引2を見てみましょう。

期日になったので支払いが完了しました。ですので、「支払手形」をなくす仕訳をしないと、いつまでも支払手形を渡している状態(返済義務を持ったまま)になってしまいます。

ということでこれまで通り、反対の借方に持っていきます。

日付 借  方 貸  方
6 / 20 支払手形 60000円
( 元々「貸方」に入っていたもの )
 
摘要:

そして残りの貸方には支払い手段を書けばよいだけです。手形の支払いは当座預金からでしかできませんので「当座預金」が入ります。

ということで次のようになります。

日付 借  方 貸  方
10 / 20 支払手形 60000円 当座預金 60000円
摘要:手形決済

↑ 目次へ戻る

まとめ

ではまとめです。

  • 小切手は、受け取った時は「現金」で、支払った時は「当座預金」で処理する
  • 約束手形は、受け取った時は「受取手形」で、支払った時は「支払手形」で処理する
  • 約束手形は期日が到来した時に改めて仕訳しなければならない

一般的には銀行振込でのやり取りが多いので、小切手や手形を扱うことは少ないように思います。

ですので、こういったイレギュラーな取引にも対応できるようになっておくと良いですね。

参考になりましたら幸いです。

-簿記