簿記

【第6回目】個人事業主ならこれだけは知っておくべき簿記講座 - 代金後払い時の仕訳を解説!

取引の中で、商品代金やサービスの料金を後払いにしてあげる/してもらうという機会があります。

今回は、売り上げや仕入と代金の支払いにタイムラグがある場合の仕訳について見ていきましょう。

新たに学ぶ勘定科目

  1. 「売掛金」
  2. 「買掛金」

「掛け」とは

例えば月内に複数回同じ相手と取引をするという場合、その都度現金や銀行振込での対応は何かと面倒になります。

そのため、商品を販売/仕入れたものの、代金の支払いは「後でまとめて」という契約も珍しくありません。

こういう後払いの取引を「掛(かけ)取引」といいます。

一般的には「ツケにしてあげる」とか「ツケにしてもらう」という表現で表されます。

簿記では実際にお金を受け取っているか、受け取っていないかに関わらず、取引が発生した時点で売り上げ/仕入れの仕訳をしておかないといけません

では、こういったまだお金を受け取っていない、まだお金を支払っていない場合はどのように仕訳するか見ていきましょう。

まずはこちらがツケにしてあげる「掛売(かけうり)」から見ていきましょう。

↑ 目次へ戻る

ツケにしてあげる場合の仕訳(掛売)

ではまずはこちらがツケにしてあげる場合(掛売:かけうり)を見てみます。

次のような取引を考えてみましょう。

取引例

取引1:2/19に商品Aを55000円で販売したが、その代金はツケにしてあげた

取引2:3/15にツケにしていた代金が銀行振込で全額支払われた

こちらも原因と結果に分けて順番に見ていきましょう。まずは取引1からです。

取引例

取引1:2/19に商品Aを55000円で販売したが、その代金はツケにしてあげた

  • (原因:何をして) ⇒商品を売って
  • (結果:どうなった) ⇒代金はツケにした(この時点では代金は受け取っていない)

まずは通常の売り上げを記入しましょう。いつも通り貸方に「売上」を入れます。

日付 借  方 貸  方
2 / 19         売 上 55000円
( 原因 )
摘要:

では残りの「結果」の方を記入しましょう。

通常なら残りの借方には代金の受け取り手段(「現金」や「普通預金(当座預金)」)を入れれば良いのですが、実際にはこの時点ではまだお金は受け取っていません。

こういったまだお金を受け取っていない売上金は「売掛金(うりかけきん)」という勘定科目を使います

ということで最終的に取引1は次のようになります。

日付 借  方 貸  方
2 / 19 売掛金 55000円
( 結果 )
売 上 55000円
( 原因 )
摘要:商品Aの販売

では今度は取引2を見ていきましょう。

取引例

取引2:3/15にツケにしていた代金が銀行振込で全額支払われた

  • (原因:何をして) ⇒代金を銀行振込で受け取って
  • (結果:どうなった) ⇒ツケがなくなった

ここでは無事に代金を受け取ったのでツケ(売掛金)がなくなりました。

ではすでに記帳されている売掛金を「なくす」ためにはどのようにすれば良いのでしょう?

ヒントは前回見た「返品(全額返金)」です。はい、元々入っていたところから逆側に持っていくと良かったのですね!

ということで、元々借方に入っていた「売掛金」を逆側の貸方に持っていきます。

日付 借  方 貸  方
3 / 15               売掛金 55000円
( 元々「借方」に入っていたもの )
摘要:

これで「売掛金」がなくなり(相殺され)ました。

そして残りの借方にはお金の受け取り手段を書けばよいだけです。ということで最終的に次のようになります。

日付 借  方 貸  方
3 / 15 普通預金 55000円 売掛金 55000円
摘要:売掛金の回収

「売掛金」が相殺されるので、結果的には次の「普通預金」と「売上」だけが残る形になりますが、必ずツケにした過程(「売掛金」)も記録しておかなければなりません。

日付 借  方 貸  方
3 / 15  普通預金 55000円 売 上 55000円
摘要:商品Aの販売

過程(ツケ)を飛ばして最終結果だけの記帳はダメ

↑ 目次へ戻る

ツケにしてもらう場合の仕訳(掛買)

今度はこちらがツケにしてもらう場合(掛買:かけがい)を見てみます。次のような取引を考えてみましょう。

取引例

取引1:2/19に原料Aを30000円で仕入れたが、その代金はツケにしてもらった

取引2:3/15にツケにしてもらっていた代金を現金で全額支払った

こちらも原因と結果に分けて順番に見ていきましょう。まずは取引1からです。

取引例

取引1:2/19に原料Aを30000円で仕入れたが、その代金はツケにしてもらった

  • (原因:何をして) ⇒原料を仕入れて
  • (結果:どうなった) ⇒代金はツケにしてもらった(この時点では代金は支払っていない)

まずは通常の仕入れを記入しましょう。いつも通り借方に「仕入」を入れます。

日付 借  方 貸  方
2 / 19 仕 入 30000円
( 原因 )
         
摘要:

では残りの「結果」の方を記入しましょう。

通常なら残りの貸方には代金の支払い手段(「現金」や「普通預金(当座預金)」)を入れれば良いのですが、実際にはこの時点ではまだお金は支払っていません。

こういったまだお金を支払っていない仕入れの代金は「買掛金(かいかけきん)」という勘定科目を使います

ということで最終的に取引1は次のようになります。

日付 借  方 貸  方
2 / 19 仕 入 30000円
( 原因 )
買掛金 30000円
( 結果 )
摘要:原料Aの仕入れ

では今度は取引2を見ていきましょう。

取引例

取引2:3/15にツケにしてもらっていた代金を現金で全額支払った

  • (原因:何をして) ⇒代金を現金で支払って
  • (結果:どうなった) ⇒ツケがなくなった

ここでは代金を支払ったのでツケ(買掛金)がなくなりました。ここでもすでに記帳されている買掛金を「なくす」仕訳をしないといけません。

こちらでも「売掛金」の時と同様に、元々入っていたところから逆側に持っていきます。ということで、元々貸方に入っていた「買掛金」を逆側の借方に持っていきます。

日付 借  方 貸  方
3 / 15 買掛金 30000円
( 結果 )
         
摘要:

そして残りの貸方には支払い手段を記入します。ここでは現金で支払いましたので、最終的に次のようになります。

日付 借  方 貸  方
3 / 15 買掛金 30000円
( 結果 )
現 金 30000円
( 原因 )
摘要:買掛金の支払い

「売掛金」の場合と同様、結果的には次の「現金」と「仕入」だけが残る形になりますが、必ずツケにしてもらった過程(「買掛金」)も記録しておかなければなりません。

日付 借  方 貸  方
3 / 15  仕 入 30000円 現 金 55000円
摘要:原料Aの仕入れ

過程(ツケ)を飛ばして最終結果だけの記帳はダメ

↑ 目次へ戻る

まとめ

ではまとめです。

  • ツケにしてあげたときは「売掛金」、ツケにしてもらったときは「買掛金」で処理する
  • お金のやり取りがなくても、商品やサービスの動きがあった時点で記帳しなければならない
    ※「ツケにしてあげた/してもらった」という事実を省略してはいけない

では次回はクレジット決済をした場合の仕訳について見ていきましょう。

-簿記