習うより慣れろ!ということで、今回から実際の簿記(仕訳)についてみていきます。
初回となる今回はやっぱり事業の基本、自分の事業で扱っているモノやサービスを販売した場合(売り上げ)の仕訳を見ていきます。
新たに学ぶ勘定科目
- 「売上」
- 「現金」
- 「普通預金」「当座預金」
仕訳の大まかな流れ
まずは仕訳の大まかな流れを見ていきます。基本的に次の流れで仕訳していきます。
仕訳の流れ
- 取引を「原因」と「結果」に分ける
- 「原因」とその金額を記入する
- 「結果」とその金額を記入する
- 摘要欄に大まかな取引内容を書く
まずは仕訳をしやすくするため、取引を「原因」と「結果」に分けます。
その原因と結果を「借方(左側)」と「貸方(右側)」に振り分けます。
原因と結果のどちらが借方(左側)になるのか、貸方(右側)になるのかはその取引によって異なります。
ここでは、原因を書いてそれから結果を書くという流れにしていますが、別に結果を先に書いても構いません。
最後に、仕訳帳には「摘要」欄という取引内容を大まかに書くところがあります。
これにより、後々帳簿を見返した場合にどのような取引だったか確認しやすくなります。
これで仕訳の一連の流れは終了です。
それでは実際に売り上げ時の仕訳を見ていきましょう。
売り上げ時の仕訳をしてみよう:現金での売り上げ
ではここから実際に売り上げがあった場合の仕訳についてみていきましょう。
まずは次のような取引を考えてみます。
取引例
【4/14に商品Aを2200円で販売し、その代金を現金で受け取った】
この取引例を基に、先ほどの「仕訳の流れ」で仕訳をしていきます。
1:取引を「原因」と「結果」に分ける
ではこの取引例を「原因」と「結果」に分けてみます。
原因・・・何をして
結果・・・どうなった
ということで、この取引例では次のような感じになりますね。
取引例
【4/14に商品Aを2200円で販売し、その代金を現金で受け取った】
- (原因:何をして) ⇒商品を売って
- (結果:どうなった) ⇒代金(2200円)を現金で受け取った
2:「原因」とその金額を記入する
続いて「原因」とその金額を記入します。
まずは「商品を販売した(売り上げがあった)」という部分を仕訳帳に書きます。
「商品を販売した(売り上げがあった)」ことを示す勘定科目は 「売上(うりあげ)」になります。
また、この「売上」は貸方(右側)に書きます。
ということで、まずは次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
4 / 14 | 売 上 2200円 ( 原因 ) |
|
摘要: |
ついでに日付も書いておきましょう。
3:「結果」とその金額を記入する
続いて「結果」の、「代金を現金を受け取った」という部分を残りの借方(左側)に書けばOKということになります。
現金を扱う場合(現金を受け取るときも、現金で支払う時も)の勘定科目はそのまま「現金」となりますので、借方(左側)に「現金」を記入します。
ということで次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
4 / 14 | 現 金 2200円 ( 結果 ) |
売 上 2200円 ( 原因 ) |
摘要: |
4:摘要欄に大まかな取引内容を書く
最後に「摘要」欄にこの取引の大まかな内容を書いておきます。
※通常「摘要」欄は貸方の右側に配置されていますが、ここでは下部に配置しています
後々見返した場合にわかるだけで構いませんので、ここでは「商品Aの販売」としておきましょう。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
4 / 14 | 現 金 2200円 ( 結果 ) |
売 上 2200円 ( 原因 ) |
摘要:商品Aの販売 |
これでこの取引の仕訳は終了です。
売り上げがあった場合は同じ流れで仕訳をすれば良いので反復練習していけば、無意識に仕訳できるようになっていきます。
売り上げ時の仕訳をしてみよう:銀行振込での売り上げ
今度は銀行振込で代金を受け取った場合の仕訳を見ていきましょう。
取引例
【4/14に商品Aを2200円で販売し、その代金を銀行振込で受け取った】
仕訳の流れ
では先ほどと同様、「原因」と「結果」に分けてみましょう。
取引例
【4/14に商品を2200円で販売し、その代金を現金で受け取った】
- (原因:何をして) ⇒商品を売って
- (結果:どうなった) ⇒代金を銀行振込で受け取った
ざっくり言えば代金の受け取り手段が現金から銀行振込に代わっただけです。
ということで仕訳の「現金」のところを、銀行振込を示す勘定科目に変えれば良いだけです。
銀行振込の場合は「普通預金」あるいは「当座預金」という勘定科目を使います。口座の預金種目が「普通」なら『普通預金』、「当座」なら『当座預金』となります。
※「現金」と同様、受け取りも支払いも同じ勘定科目を使います
ここでは普通預金口座を想定してみましょう。ということで最終的に次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
4 / 14 | 普通預金 2200円 ( 結果 ) |
売 上 2200円 ( 原因 ) |
摘要:商品Aの販売 |
繰り返しになりますが、「現金」から『普通預金』に代わるだけです。
ちなみに、当座預金の場合なら次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
4 / 14 | 当座預金 2200円 ( 結果 ) |
売 上 2200円 ( 原因 ) |
摘要:商品Aの販売 |
このように売り上げ時の仕訳は、代金の受け取り方法を借方(左側)に書くだけで色々対応できます。
銀行口座を複数持っている場合
人によっては複数の銀行口座を使って取引をする場合もあるでしょう。
ですので、仕訳でただ単に「普通預金(当座預金)」とだけしか書いていないと、この取引の場合はどこの銀行に振り込まれたのか後々確認しづらくなります。
そこで、口座を複数持っている場合は、勘定科目の下にどの口座に入金されたのか備考として書いておきましょう。
例えば次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
4 / 14 | 普通預金 2200円 ( ぼちぼち銀行 ) |
売 上 2200円 |
摘要:商品Aの販売 |
こうしておけば、後々「この時のお金、ぼちぼち銀行に振り込んでもらったんだな」と確認しやすいですね。
こういった勘定科目の備考を「補助科目」と言います。
同じ勘定科目では後々区別しづらいという場合は積極的に補助科目を付けて分けておきましょう。
「売上」はいつ計上する?
「売上」の計上は商品を売った日(サービスを提供した日)にすれば良いわけですが、業種によって売上日をいつと捉えるかマチマチです。
八百屋さんのような対面販売の場合なら、その商品をお客さんに売った時を売上日にすれば良いですし、美容院のカットのような場合ならそのカットをした日を売上日にすれば良いです。
ただ、商品を輸送するとなった時は、商品の発送と商品の到着にタイムラグが生じることが通常です。
その場合の売上日は「商品を発送した日(出荷基準)」、「商品が相手に届いた日(納品基準)」、「相手が検品した日(検品基準)」のいずれかが考えられますが、基本的にどの基準を採用しても構いません。
ただし、その場その場で基準を変えてしまうと意図的に売上日を操作しているような印象がもたれるため、一貫性が必要になります。ですので一度決めた基準は継続するようにしましょう。
ちなみに、ピアノレッスンのような月謝制(前払い制)の場合は、実際にはまだレッスン(サービスの提供)を行っていませんが、その月謝を受け取った日(振り込んでもらった日)で構いません。
問題で力を付けよう!
では問題を作ってみました。復習をかねて仕訳の練習をしてみてください。
問題1
取引例
【7/17にお客さんにサービスの提供(ヘアカット)をした。代金4500円は現金で受けとった。】
下記に仕訳をしてみてください。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
/ | ||
摘要: |
解き方は、まずはこの取引を「原因」と「結果」の2つの側面に一旦分けます。
原因(何をして) ⇒「 」
結果(どうなった) ⇒「 」
サービスの提供(ヘアカット)は現物のモノを売るわけではありませんが、立派な売り上げです。
売り上げ時の勘定科目は何で、それは借方と貸方どちらに書くのでしょう?そして代金は何でもらって、その場合何という勘定科目を使ったのでしょう?
ということで、答えは次のようになります。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
7 / 17 | 現 金 4500円 | 売 上 4500円 |
摘要:ヘアカット代 |
問題2
では今度は下記の仕訳からどういう取引になったかを考えてみましょう。
日付 | 借 方 | 貸 方 |
11 / 13 | 普通預金 35000円 | 売 上 35000円 |
摘要:ホームページ作成代 |
まずは売上が貸方に書かれているので、何かしらの販売行為(サービスの提供)があったんだなと想像できます。
そこで摘要欄を見ると、「ホームページ作成代」と書かれているので、ホームページ作成代行の事業者だとわかります。
借方には「普通預金」と書かれているので、代金の受け取りは銀行振込だったんだなとわかります。
ということで、答えは次のようになります。
回答例
【11/13にお客さんにホームページを納品した。その際の代金3500円は銀行振込で受け取った。】
ここまで来ればなんとなく仕訳のコツが掴めたんではないでしょうか?
まとめ
ではまとめです。
- 商品を販売(サービスの提供)をしたら無条件に「売上」を貸方(右側に)書く!
- 残りの借方(左側)には、売上金の受け取り手段を書く!
それでは次回は「仕入れ」の場合の仕訳について見ていきましょう!